2021年度東北大学法科大学院前期入試 再現答案 民事訴訟法

小問1

 民事訴訟法114条1項にいう「主文を包含するものに限り」とは、訴訟物たる権利・法律関係の存否についての判断を意味する。民事訴訟の目的は、訴訟物たる権利の存否及び範囲を確定することに主たる目的があるからである。また、既判力の趣旨は紛争の終局的解決と、手続保障を前提とする自己責任にあるところ、かかる趣旨からすれば、訴訟物たる権利・法律関係について既判力を及ぼせば足りる。加えて、既判力は後訴における当事者の訴訟行為の自由度を奪うため、「主分を包含するもの」は必要最小限度にとどめるべきである。
 したがって、「主分を包含するものに限り」とは、訴訟物たる権利・法律関係の存否についての判断を意味する。

小問2

 本件訴訟の訴訟物は、所有権に基づく返還請求権としての甲土地明渡請求権である。この請求は、甲土地を①Xが所有している②Yが占有していることが要件となるところ、前訴確定判決により、甲土地がXの所有であることが確認されているため①を満たすし、本件訴訟においてYは、甲土地を占有している事を認めているため、この請求が基礎付けられる。
 ここで、当事者は、前訴裁判所の訴訟物たる権利・法律関係の存否についての判断に矛盾する主張をすることができない。かかる主張は、前訴裁判所の判断に矛盾する以上、既判力により遮断されるからである(民事訴訟法114条1項)。そして、既判力が作用する場面は、前訴訴訟物と後訴訴訟物が、①同一関係②先決関係③矛盾関係の場合である。
 本件では、後訴訴訟物は、前訴訴訟物に関する判断が、そのまま要件となっており、前訴訴訟物と後訴訟物の先決関係となっている。そのため、Xが甲土地を所有しているという判断に矛盾する主張が、既判力により後訴で排斥される結果、後訴においても、甲土地がX所有であることが認定される。
 したがって、本件訴訟について、裁判所は証拠調べを経ずに判決をすることができる。

小問3

 小問3も小問2と同様に、前訴訴訟物と後訴訴訟物が①同一関係②先決関係③矛盾関係になっているかどうかを確認して、既判力は及ぶと結論づけました。