令和5年司法試験 民法 再現答案

時間120分(構成25分)6枚前半 予想B→B評価

 

第1 設問1(1)

1 請求1について

(1)請求1は、共有持分権に基づく返還請求権としての、甲建物明渡請求である。もっとも、Dは、短期配偶者居住権(1037条)が成立しているとして、占有権原を主張できないか(下線部ア)。

ア Aは、死亡前にDと再婚しているため、Dは、「配偶者」にあたる。

イ そして、Dは、A死亡時すなわち「相続開始の時」(882条)に、「無償で」甲建物に「居住」していた。さらに、1037条1号、2号のいずれにも当たらない。

 よって、短期配偶者居住権が成立する。

(2)もっとも、Dは、Aに子B及びCがいることを知っていたにもかかわらず、BCの同意を得ず高建物の改築工事を行なっている。かかる改築工事は、共有物の変更にあたり、BCの同意を得なければならない(251条)。そこで、Dが同権利による占有権限を主張するのは権利濫用(1条3項)にならないか。

ア 上記のように、原則として、共有物の変更には共有者の同意が必要である。しかし、長年かかる共有物に関与してなかった等の事情がある場合、同共有物について、他の共有者の関心がないのが通常である。

 そこで、かかる共有物に他の共有者が長年関与していなかった事情がある場合は、占有権限の主張は権利濫用にならない。

イ 本件においては、甲建物の共有者であるBCは、成人後いずれも他県で居住するようになり、甲建物に長年関与していなかった。

 よって、上記の事情があるため、Dが、無断で共有物の変更をしたことを持って、占有権限の主張が権利濫用になるわけではない。

(3)以上より、Dは、請求1を拒むことができる。

2 請求2について

(1)上記の通り、Dは、占有権限があるため、無償で甲建物を使用でできる。

 よって、請求2も拒むことができる

第2 設問1(2)

1 請求1

黙示の使用貸借成立肯定、全体を使用する権利を有する。占有権原の抗弁ok

2請求2

 「別段の合意」(249条)に引き付け。

第3 設問2

1(1)について

(1)Eは、Fの受領遅滞を理由として、債務不履行に基づく解除(541条)を行う。

 もっとも、Fに受領義務を認めることができるか。なお、代金支払い債務は不履行に陥っていない。本件コイの引渡しから、2ヶ月以内に支払うことが合意されているからである。

ア 民法は、受領遅滞の効果として、注意義務の軽減(413条1項)と、増加費用の債権者負担(同条2項)のみ規定しており、受領義務を明示的に認めていない。

 もっとも、私的自治の原則の下、契約の拘束力を重視すべきである。

 そこで、信義則(1条2項)を根拠に、受領することが契約内容となっている場合は、受領義務を肯定する。

イ 本件においては、本件コイについての売買契約が成立し、本件コイをEの事務所で引渡し、その引渡後に代金を支払うことが合意されている。本件コイをFが受領しなければ、Eは代金の支払いを受けることができず、契約を締結した目的を達成できない。

 よって、Fが、本件コイを受領することが契約の内容をなしているため、Fに受領義務がある。にもかかわらず、Fは、Eの事務所に本件コイをとりに行っていないのであるから、同義務違反がある。

 よって、Fは、「債務を履行しない」と言える。

(2)Eは、Fに対し、令和4年10月30日までに本件コイを受け取りに来なければ、同月31日付で契約①を解除する旨告げているのであるから、「相当の期間を定めてその履行の催告」をしている。

(3)しかし、Fは、その期間内に受領義務を履行していない。

(4)Fが、本件コイを受領しなければ、Eは代金を受け取ることができないのであるから、その不履行が軽微であるとも言えない(541条但書)

(5)本件において、債権者であるEの「責に帰すべき事由」(543条)はない。

(6)以上より、Eの解除の主張は認められる。

2 (2)について

(1)Eは、Fの受領遅滞を理由に、債務不履行に基づく損害賠償請求(415条1項)行う。同要件は、①債務不履行②損害③①と②との因果関係④帰責事由である。

ア 上述のように、Fには受領義務違反という債務不履行がある。

イ Fは、自己の意思で両義務を履行していないため、帰責事由がないとはいえない。

ウ もっとも、本件コイの相場が、令和8月はじめには1万円だったものの、11月には6000円まで下がっている。そこで、損害がいくらか、Fの受領義務違反と因果関係のある損害は何かが問題となる。

 損害とは、債務不履行がなされた現在の状態と、債務不履行が無ければ有していたであろう状態との差額(差額説)であり、損害の範囲は416条によって画されている。「当事者」とは債務者を指し、算定時期は、債務不履行時を指す。債務者に事情の予見可能性があれば、特別損害まで負わせても不当ではないし、金銭賠償の原則(417条)から、損害賠償請求権の金銭的評価が可能となる時点で、損害賠償額を算定するのが妥当だからである。

 営業利益はダメ

第4 設問3

1 物上代位の対象が転貸料債権に及ぶか→k(アガルートママ)→及ぶ 5月分おk

2 6月分以降は、弁済期経過後であり、債務不履行後なので、371条用いて問題なく及ぶとした

以上

 

一日目とは打って変わって、22時就寝6時半起きの8時間半熟睡をキメることができたため、昨日の脳疲労が嘘のようにスッキリしていた。試験にも慣れ、平常心で解くことができたと思う。相変わらず問題冊子を破るのは難しい。

設問1は、TKC模試で出題された配偶者居住権がメインだったので、ガッツポーズしつつ丁寧に要件検討を行った。設問2、3共に、アガルートの論証集に載っている論点そのものだったため、問題の所在に迷うことはなかったが、当てはめが難しく、再現もできないほどグチャグチャな文章を書いてしまった記憶がある。

当てはめに自信がなかったので貰えてB評価予想、案の定B評価だった。問題の所在を間違えず規範定立ができれば、相対的に沈むことはないのだなぁと実感。