2021年度東北大学法科大学院入試 雑感

 2020年8月30日に、東北大学法科大学院前期入試(法学既修者)を受けてきました。今回はそれについての雑感を書きたいと思います。法科大学院入試について言及しているブログ・ツイートは少なく、私自身法科大学院入試に不安を感じていましたので、私と同じように不安を抱いている方にこの記事が届けば幸いです。

 

 試験会場は東京秋葉原秋葉原のビジネスホテルに前泊して入試に臨んだ。

 入試前日は高速バスで東京へ向かった。道中は論証集(アガルート)を繰り返し読んだ。車酔いをするタイプだが、なぜか今回は文字を凝視しているにもかかわらず車酔いしなかった。この時点で既に心がふわふわしていた。

 夕方ホテルに到着。↓のビジホに泊まった。とにかく試験会場から近いし値段が安い。朝食はコロナの関係で食べることができなかった。

bwhotels.jp

 チェックインを済ませ、夜飯までひたすら論証集を確認した。せっかく秋葉原に来たのだからここでしか食べられないものを食べようと思ったが、心がそわそわしているし、人と極力関わりたくなかったので、結局ガストで食べた(ちなみに牛ステーキを食べた。美味しかった。)。帰りに試験会場を確認した。

 ホテルに帰り、また論証集を確認した。実は、高校入試・大学入試は推薦で合格したため、ペーパーテスト一本勝負の入試の前日に何をしたら良いのかわからなかった。心がふわふわするだけで、緊張も特になし。

 22時くらいに、親から応援の電話がかかってきた。この電話はよろしくなかった。明日が入試であるという現実を突きつけてきた。一気に緊張した。そろそろ寝ようと思ってたのに。緊張で寝れなくなったので、仕方なくオードリーのオールナイトニッポンを流しながら、論証集を流し読みした。結局寝たのは0時過ぎ。

 目覚めの悪い起床。とりあえずご飯食べて顔洗って歯磨きをした。ほどよい緊張感とやる気が私を包み込んでいた。会場に向かっている途中、受験生とみられる人を数人見かけた。「うわーめちゃめちゃ頭良さそう。この人たちと戦わなきゃいけないのか...」と思い、緊張が増しに増しはち切れそうだった。受付のおばさん?たちの親切な対応・笑顔で緊張がほぐれたのを鮮明に覚えている。9時くらいに席について時が来るまでひたすら論証集を確認していた。

 一科目目は民事系。民法、商法、民事訴訟法を150分で解く。出だしが肝心だと思った。出だしが肝心だと思えば思うほど緊張した。二科目目は公法系。憲法を60分で解く。私は憲法が苦手だったので、憲法でどれだけ守れるかが本試験の最大の焦点だった。一科目目で人生最大の緊張感を経験したのにそれを悠々と上回ってきた。三科目目は刑事系。刑法、刑事訴訟法を90分で解く。刑事系は得意だったので、ほどよい緊張感で解くことができた。以下各科目の出来を綴る。

民法

 第1問は即時取得の主観的要件について。第2問は債権譲渡の対抗要件について。第3問は過失相殺と身体的素因について。第4問は相続放棄について。最初の科目ということもあり、脳がパニック状態だった。覚えてきた論証が頭の中をぐるぐる回っている感じ。いざ答案用紙に書こうとすると手が緊張で震えてかけない。震えてるから字が汚い。字が汚すぎて読んでもらえなくて落ちるんじゃないかとも思った。
 肝心の内容に言及すると、第1問で早速やらかした。「甲機械はAの手元に残されたままとなった。」という一文につられて「その後、Cは、Bが甲機械の所有者であることを知り、慌ててAから機械を受け取った。」という一文を完全に見落とした。そのため、全く関係のない占有改定と即時取得についての論点を大展開してしまった。試験直後に気がついて、冷や汗が噴き出した。第2-4問目は無難に書いた。家族法ノータッチだったので第4問は勿論わからなかったが、民法919条・921条を適当に引用して、適当に書いた。

商法

 全体的に趣旨説明問題だった(過去問と同様)。特に記すことがない(COVID-19が出てきた。お前は試験問題にも出てくるのかと苛々した)。

民事訴訟

 The 既判力。既判力についての説明を小問1-3すべてにおいて求められた。前日にアガルート講師渡辺悠人先生の既判力講座を見たのが功を奏して、無難にまとめることができた。

憲法

 The 薬事法違憲判決。過去問の傾向から判例理解が必須だなと思ってはいたが、こんなにべったり聞かれるとは思ってなかった。職業選択の自由の意味・職業の性格意義・職業の許可性が合憲と判断されるための要件について丸暗記していたので、そのまま答案に書いた。

刑法

 共謀共同正犯・共同正犯と正当防衛・共犯と錯誤・正当防衛の成否を中心に書いた。刑事系は特に時間が短い。二科目90分なので一科目あたり45分で解かなければならない。加えて本試験の問題は論点が非常に多かったため、論証をコンパクトにまとめ、コンパクトに当てはめ、結論を出すということが求められた。私は、論証をフルスケールで覚えていたので、現場で論証を短く書いて、当てはめを充実させた。

刑事訴訟法

 訴因の特定・共謀共同正犯の訴因について書いた。どのように書けばいいのかよくわからなかったが、1問目は、訴因の特定の論証を吐き出して適当に当てはめた。2-3問目は訴因の訴因の特定の趣旨である防御権告知機能から考え、結論を出した。

 

 試験が終わった直後は、落ちたかなぁ思っていた。民法ではやらかしたし、憲法は小問4-5分からなかったし、刑法は字が汚くて読んでもらえないし、刑事訴訟法は釈然としないし...。何がともあれ、試験は終わったわけなので、支えてくれた家族友人先輩教授先生コーチに報告した。「お疲れ様」の一言は僕を救ってくれた。

 以上が大学院入試前日・当日の雑感です。思ったことを適当に文字に起こしただけなので稚拙な文章ですが許してください。

 

 2020年9月30日に合格発表がありました。結果は奨学金給付合格でした。奨学金給付対象者であるかは、発表当日にはわからず、後日送られてくる合格通知書で知ることができます。東北大学のホームページで合格を確認したのですが、割と本気で落ちたと思っていたので番号を見つけて安堵しました。また、あの答案で奨学金給付対象なんだぁと疑問にも思いました(再現答案を記事にしているのでそちらもどうぞ。「え、こんなのでいいの?」という答案ばかりだと思います。)。学部生が思っているよりもロースクール受験生のレベルは高くないのかもしれません。
 以上の経験から、東北大学法科大学院入試は、基本的なことをべったり穴のないように答案用紙に綴るだけで、合格どころか全免までもらえてしまうということがわかりました。逆に言えば、基本すらできていない法科大学院受験生が一定数いるということになります。基本ができていればそれだけで頭一つ抜きん出るということです。これから法科大学院を受験する方は、基本を疎かにせず、一つ一つしっかりと頭に染み込ませて欲しいと思います。